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花武者秘話
2016-03-09 11:01:33
久しぶりの記事投稿となります。近日、掲載しました「花武者」というタイトルの絵に関するお話です。

こちらは、橋本ちかげさんと、霜月透子さんの共作「水茎の跡」に差し上げたファンアートです。
「水茎の跡」には、美しい鎌倉の風景が多く出て参ります。
静御前が、物語のキーワードの一つでもあります。ヒロインである美鈴さんという女性を、絵描きの男性・彰太さんが静御前のように見立て、絵を描く場面があります。

そこで九藤は、ファンアートのテーマに白拍子、静御前を描きたいと思ったのです。
それだけでなく、別の私情も挟みました。

世を正視する方に、今は暗い時代と見えておられるかと思います。
少なくとも九藤には、暗く感じられます。自分のいる環境や最近の出来事も、決して明るいばかりではありません。

しかし人は思うように、信じるように生きるしかありません。

舞いたければ舞えば良いのです。歌いたければ歌い、描きたければ描けば良い。

ただ、美しく在ってくれれば。

それが、その人自身を幸せに近くするのだと思っています。

腰に太刀を佩き、手を天にかざして。
鶴岡八幡宮で、頼朝の前で舞いを披露した静御前は、身籠っていたとも聴きます。

彼女は何を想って舞い、歌ったのか。今は亡き義経を恋う歌を、彼を死に追い詰めた頼朝の前で歌ったのが史実であれば、途方もない度胸です。

強さとしなやかさと、人を包むような度量の持ち主だったのではないかと、勝手に想像しました。
美しく舞うことにも誇りを抱いていたでしょう。
彼女は、男とは異なる闘いを、演じてみせたのではないでしょうか…。

タイトルの「花武者」は、その思いからつけました。